使命と魂のリミット/東野 圭吾
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勝手に採点 ☆☆☆☆☆


心臓の動脈瘤で死去した父親の影響で心臓外科医
を目指す研修医氷室夕紀。


彼女の指導医は父親のオペの執刀医だった西園教授。
しかも彼は近々彼女の新しい父親となることが決まった。


父親の死の原因に疑問を抱く彼女は、彼の真意を探
ろうと思い悩むが・・・。


一方で彼らが勤務する帝都大学病院には、医療ミスを
原因に病院を破壊するという脅迫状が発見され、警察
も乗り出し事態は緊迫の度を増していく。


さすがは「東野圭吾」と唸らせるできばえ。


コンスタントにこのレベルの作品を作れるのは彼しか
いないだろう。人気、実力ともさすが。


トリックに頼らないヒューマニズム溢れる人間ドラマ
は読み手を強く引き付け、読後の満足感も申し分ない。


今回はストーリーとしてはドンデン返しのない、到って
規定路線を走り続けたものであるが、ラスト数ページの
教授の告白は涙なくしては読めない。


いつもながらではあるが、犯人の犯行動機がイマイチ希薄
である感は否めないものの、終盤での心変わりもあって
よりリアリティーが増す結果となっている。


東野氏の描く心のなかに強い意思を持ってひたむきに生きる
人たち。彼らが主人公である限り彼の作品は輝きを失わないはず。