夜明けの街で/東野 圭吾
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勝手に採点 ☆☆☆☆


中年に差し掛かるサラリーマン渡部が陥る社内不倫。


派遣社員・仲西秋葉との危険な恋愛に、彼はやがて妻と幼い
娘を捨てる覚悟を決めていく・・・。


しかし、秋葉の過去には隠された秘密が・・・。


渡辺淳一ばりのドロドロ不倫小説かと思いきや、そこは
さすが東野。不倫はあくまで刺身のつま。


それでも前半部分は、恋愛小説さながらのリアリティで、
仕事と生活に追われていた渡部が急速に恋愛に目覚めて
いく過程をスピーディーに描く。


男性社員と打ち解ける秋葉に嫉妬する場面や、劇的なスキー
場での再会など男心をくすぐるつくり。


一方、ネタのキモとなる過去の事件だが、ここはどうも不
自然さが鼻をつく。自殺を他殺と見誤る捜査もいかがなものか。


また、強い意思を心に秘めた行動とは言え、あまりに身勝手な
行動ゆえ、心情的に秋葉に同情できるところが少ないことも
納得感が乏しくなっている要因。


東野作品は、「ホントにそんなことまでするのか!?」という
疑問が生まれない作品ほど秀逸。


そういう意味で残念ながら完成度に難点が残る。


とはいってもそれは東野作品のなかの位置付け。
娯楽作品としては十二分に楽しめるデキ。